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物流コラム

2025年版|物流業界の変化を総点検:2024年問題からCLO制度まで

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目次

1.2025年を振り返る ー 物流業界は”構造変化の入り口”に立った年

2.2025年の主な物流ニュースと動き

   ①人手不足への対応―外国人ドライバーの採用拡大

   ②人手不足への対応―置き配の標準サービス化

   ③輸送効率化に向けた制度改革―ダブル連結トラックや企業間連携の促進

   ④技術革新と施設整備―自動運転トラック国内初の商用運行

   ⑤物流効率化を支える組織改革:CLO制度の導入

3.なぜ今、構造変化が始まっているのかー荷主・運送・倉庫事業者が一体となった改革への道

4.まとめ| 2030年へ向けた実装フェーズの幕開け

 

 

1. 2025年を振り返る — 物流業界は“構造変化の入口”に立った年

2024年問題から1年が過ぎた2025年も終わろうとしています。大規模な混乱は生じていないものの、ピーク時の配送力不足や価格高騰など、物流を巡る負担を感じるシーンもあったのではないのでしょうか。

 

さらに2030年に本格化する労働人口の減少を見据えると、これまでの延長線上では物流の維持が難しいことが明確になりつつあります。こうした状況の中で目立ったのは、物流の構造そのものを変えようとする動きが加速した点です。

 

以下では、2025年に見られた主な物流業界のニュースを、「人手不足への対応」「輸送効率化」「制度・組織改革」という観点から整理します。

 

 

2.2025年の主な物流業界ニュース

人手不足への対応―外国人ドライバーの採用拡大

ドライバーの稼働時間が制限される中、輸送力を維持する手段として外国人ドライバーの採用が加速しました。政府は2024年、「特定技能1号」(最長5年の在留資格)に自動車運送業を追加。2025年は受け入れ準備が本格化しています。特にインドネシアやベトナムなどからの採用が中心で、大手企業による運転技能や日本語教育のための施設設立も相次ぎました。

2027年頃には物流倉庫業も特定技能1号に追加される予定で、人的リソース確保の中長期的な基盤づくりが始まっています。

 

人手不足への対応―置き配の標準サービス化

2025年11月にはラストワンマイルの宅配便で、玄関先や宅配ボックスへの配送、いわゆる「置き配」を基本サービスに位置付ける方針が報じられています。再配達などの負荷軽減が期待される一方、オートロック開錠に伴うセキュリティ面の懸念も指摘されており、利便性と安全性の両立が今後の課題となります。

荷主側にとっても今後は「誰と・どう届けるか」を考えた工夫も必要になってくるでしょう。

 

輸送効率化に向けた制度改革―ダブル連結トラックや企業間連携の促進

制度面から輸送効率を上げる取り組みも活発化しています。1台で通常2台分の荷物を運べるダブル連結トラックの走行可能路線が拡大されてきましたが、2025年には申請手続きが大幅に簡素化され、インフラ整備も進んでいます。

また東京港では、複数の荷主企業と物流業者が参加したオフピーク輸送や共同輸送の実証実験が行われ、待機時間の短縮や1人当たりの輸送量増加といった成果が報告されました。

 

技術革新と施設整備―自動運転トラック国内初の商用運行

2025年7月には、自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行が国内で初めて開始されました。まずは「レベル2」(運転手による補助ありの自動運転)での運用ですが、2027年には「レベル4」(限定地域での完全自動運転)への移行を目指しています。

ダブル連結トラックや自動運転車両を前提とした次世代基幹物流施設の開発構想も浮上。高速道路直結型の大型施設を三大都市圏に整備する計画で、数年後には “次世代モビリティ対応型物流網”が標準になるかもしれません。

 

物流効率化を支える組織改革:CLO制度の導入

2025年4月、改正された物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)が施行され、2026年4月からは年間総重量9万トン以上の荷物を扱うおよそ3000社の「特定事業者」(荷主、運送業者、倉庫業者)に対し、物流統括管理者(CLO) の選任が義務化されることになりました。CLOは経営判断に参画する立場の者であることが求められます。

 

事業者には、「ドライバーの荷待ち時間短縮」、「共同配送などによる積載効率の向上」、「「送料無料」表示の見直し」といった基本方針が示されています。荷主側にも“物流の効率化責任”が明確に課され、物流事業者と荷主が協力して物流改善を主導する構造への転換が制度として確立しつつあります。(「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

 

 

3.なぜ今、構造変化が始まっているのか

  ー荷主・運送・倉庫事業者が一体となった改革への道

これら一連の改革の背景にあるのが、「フィジカルインターネット」―インターネットのように「貨物や車両、倉庫などのリソースを共通インフラとして共有・最適化する物流ネットワーク」構想―の概念です。人口減少の崖を前に、個社努力では限界が見え始めました。それを受け、複数企業が物流資源を共用して効率化を図る考え方が採用されて、政府・産業界の双方で取り組みが本格化しています。

(経済産業省|フィジカルインターネットの実現に向けた取り組みについて)

 

これらの動きが示しているのは、物流網の維持が物流会社だけの課題ではなくなったという点です。荷主企業もまた、調達・生産・販売を支える前提条件として物流を捉え直し、自社の意思決定に組み込んでいくことが求められる段階に入っています。

 

今後、CLOの先導で企業・業界が垣根を越えて共通のインフラ・仕組みを活用できるようになれば、輸送効率・在庫管理・コスト構造に根本的な変化が訪れる可能性があります。

 

 

4.まとめ| 2030年へ向けた実装フェーズの幕開け

これらの取り組みは個別の改善施策ではなく、2030年に直面する構造的な供給力不足を見据えた“次の物流の姿”を形づくるものです。

 

特にCLOの義務化は、企業の物流が単なるオペレーションではなく、経営課題として扱われる時代への転換点と言えるでしょう。2025年はこれまでの議論が実装へと進み、物流が社会全体で再設計されていくプロセスの起点になったと期待できます。

 

この先の数年が、2030年以降の物流の姿を左右する重要な分岐点となるでしょう。

とは言え、求められているのは急激な改革ではありません。物流を経営課題として捉え、早い段階から状況を把握し始めることが重要です。今からの小さな判断が、中長期的な競争力の差につながっていきます。

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