在庫管理を改善・向上させるには? 在庫精度が経営判断に与える影響と実践的な改善策
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在庫管理は現場業務の一つと思われがちですが、実は経営判断の質を左右する重要な要素でもあります。
特に在庫精度が低い状態では、販売・調達・投資といった判断が不確かな情報を前提に行われてしまいます。
本コラムでは、在庫管理の基本から、在庫精度を向上させるための考え方・具体策までを、物流現場と経営の両面から解説します。
目次
3.在庫精度が経営判断に与える影響とは―製造・販売から見た重要性
5.在庫精度を改善するための基本アプローチ―まず整えるべき考え方
1.在庫管理とは何をすることなのか
在庫管理とは「単に在庫数を把握すること」ではありません。
企業の在庫を最適な状態や量で供給できるように管理する業務です。
従って重要なのは、
- 正しい数量情報を
- 正しいタイミングで
- 正しい場所・状態で把握できていること
を維持することにあります。
単に数字を合わせるだけではなく、入荷・保管・出荷といった日々の業務が正しく運用され、その結果として在庫情報が信頼できる状態にあるかが重要です。
この在庫管理の結果として現れる指標が「在庫精度」です。
在庫精度は在庫管理の良し悪しを測る“成果指標”であり、在庫管理を改善するうえで避けて通れないテーマと言えます。
関連コラム:在庫管理のやり方を解説 在庫管理の目的やメリット、効率化する方法も紹介
2.在庫精度とは?基本的な定義と考え方
在庫精度とは、帳簿上の在庫数と実際の在庫数がどれだけ一致しているかを示す指標です。
一般的には棚卸時の誤差率で判断します。
| 在庫精度(棚卸誤差率)= 棚卸差異数 ÷ 帳簿在庫数 × 100 |
値が小さいほど差異が少なく、在庫精度が高いことを示しており、現場の在庫情報が正確に管理されている状態を意味します。
3.在庫精度が経営判断に与える影響とは―製造・販売から見た重要性
在庫精度は、現場業務の効率だけでなく、経営判断の前提となる情報の信頼性に直結します。
在庫精度が高い状態と低い状態では、同じ数字を見ていても、下される判断の質が大きく変わります。
| 【製造面】から見た在庫精度の重要性 |
(1)生産計画の信頼性を左右する
在庫データが誤っていると、実際には必要な部材が足りないのに「在庫あり」と判断して生産ラインが止まる、といった事態が起こります。逆に、在庫が実際より少なく見えて過剰発注を行い、余剰在庫や在庫コストを増やしてしまうケースもあります。
(2)調達・購買部門の余分な負荷
誤差によって欠品が発生すると、緊急調達・特急輸送など、計画外のコストが発生します。
在庫精度を高く維持することは、調達コストとリスクを最小化する“見えないコスト削減”でもあります。
| 【販売面】から見た在庫精度の重要性 |
(1)納期回答と顧客満足度への直結
販売部門が顧客に納期回答を行う際、在庫情報が不正確だと「納品できない約束」をしてしまうリスクがあります。
特にECやBtoBオンライン受注では、在庫データの1日遅れがそのまま機会損失につながります。
(2)販売計画・需要予測の精度に影響
在庫データは需要予測や販促計画の基礎データでもあります。
誤差があると、売れ筋商品の在庫切れや、売れ残り商品の過剰生産といったアンバランスが発生します。
つまり在庫精度は、販売戦略の精度にも直結しているのです。
在庫精度が低い状態の最も大きな問題は、
「在庫は見えているつもりで、実際には正しく見えていない」ことです。
在庫精度は、単なる現場指標ではなく、
経営が安心して判断を下すための“基礎情報”であるという視点が重要と言えるでしょう。
4.在庫差異はどこから発生するのか―物流現場に潜む主な原因
在庫精度は棚卸の頻度だけで決まるものではありません。
実務上、特に影響が大きいのは以下の工程です。

中でも入荷時の精度は非常に重要で、ここでのズレは後工程まで影響を及ぼします。
在庫精度は、日々の作業精度の積み重ねの結果であることを理解しておく必要があります。
5.在庫精度を改善するための基本アプローチ―まず整えるべき考え方
在庫精度を改善しようとすると、
「検品を増やす」「棚卸頻度を上げる」といった対応に走りがちです。
しかし重要なのは、どの工程で、なぜ精度が崩れているのかを見極めることです。
すべての工程を同じ強度で管理する必要はありません。
在庫精度改善は、作業量を増やすことではなく、管理の重点を正しく置くことが出発点です。
6.物流現場で実践できる在庫精度改善の具体策
物流現場で実践できる改善策には、以下のようなものがあります。
| 1 | 作業ルールの標準化 |
判断が属人化している作業やイレギュラー対応には統一の手順・ルールを定めましょう。属人化した判断や例外対応が常態化している工程ほど差異が発生しやすくなります。イレギュラー対応も事例と対応の記録を残すこと、イレギュラーの発生原因の解消に努めるなどの対策が重要です。
| 2 | 作業手順のマニュアル化と教育 |
手順やルールをマニュアル化するのに加え、それを浸透させることが大切です。決まったルールがあっても守られない環境では、またすぐに属人化した作業に戻ってしまいます。マニュアルは作業者のためだけでなく、教育者がブレずに指導するためにも有用です。
| 3 | リアルタイム入力 |
ルールに乗っ取った正確な作業ができていても、紙伝票や事後入力では、在庫データの反映が遅れます。ハンディターミナルやタブレットを活用し、入出庫や加工の実績をリアルタイムに登録することで、“ズレ”が生じる時間をなくすことができます。
| 4 |
物流パートナーとの連携強化 |
倉庫業務を外部委託している場合、単なる作業代行ではなく「在庫情報の信頼性を共に高めるパートナー」として連携することが重要です。
現場運用ルールのすり合わせ、データ更新のタイミング共有など、日常的なコミュニケーションが誤差防止につながります。
これらは一つひとつは小さな問題でも、積み重なることで在庫精度を大きく下げる要因になります。
7.在庫精度は「上げる」より「維持する」ことが難しい
一時的に在庫精度が改善しても、
数か月後には元に戻ってしまうケースは多く見られます。
その原因は、改善が「仕組み」ではなく「頑張り」に依存していることです。
在庫精度を維持するためには、誰が担当しても同じ結果になる体制づくりが欠かせません。
8.まとめ|在庫精度の改善は経営判断の質を高める投資
在庫精度は、現場のKPIであると同時に、経営判断の基盤となる情報です。
完璧な精度を目指す必要はありませんが、使える精度を安定して維持することが重要です。
在庫管理の改善は、コストではなく、将来の判断ミスを防ぐための投資と言えるでしょう。
ワタナベ流通では、ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得し、保管管理・入出荷・流通加工等、物流全体の安定した業務フローの維持を実現しています。
在庫精度や在庫管理に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。


